2019/11/26(Tue) 08:38 No.3841
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
写真2:虫えい形成部位の確認
虫えい形成部位を調べるために外側を拡大鏡で観察したところ、上部は5裂した突起があり、それらがつぼまって小さな隙間があり、その下は袋状になっていました。さらにこの虫えいは、茎から柄によって支えられ、合萼に覆われた蕾が肥大したもののようにも見えました。
寄主植物:
撮影年月日:年月日/
2019/11/26(Tue) 08:39 No.3842
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
写真3:虫えい内部の確認
虫えいを割いて虫室内部を観察しました。しかし虫えい内部は空洞で、花弁や雄しべ・雌しべの痕跡が認められず、蕾に形成された虫えいとは判断できませんでした。なお虫室内部には、1匹の有翅型成虫と30匹の有翅型幼虫、1匹の無翅型成虫が確認でき、脱皮殻も多数みられました。
寄主植物:
撮影年月日:年月日/
2019/11/26(Tue) 08:45 No.3843
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
写真4:無翅型成虫の確認
解体した虫室から出てきた無翅型成虫の写真です。アブラムシ図鑑では、「ハッカイボアブラムシの体色は淡黄色から黄緑色」。また「ヤマハッカアブラムシの背面の毛は長い」との記載があり、いずれも当該アブラムシと相違点があるように思われました。
寄主植物:
撮影年月日:年月日/
2019/11/27(Wed) 15:56 No.3844
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:湯川淳一
小川様:ヤマハッカの虫えいのご投稿、有難うございました。北大の秋元先生にも伺ったのですが、ご存知ないようでした。私も見たことがありません。アブラムシのご専門の方々に聞いてみます。しばらくお待ち頂けますようお願い致します。
2019/11/27(Wed) 19:57 No.3845
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
湯川先生:
お忙しいところ投稿を見ていただき、本当に有り難うございました。
お手数をおかけしますが、宜しくお願い申し上げます。
2019/11/30(Sat) 20:58 No.3846
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:佐野正和
私自身は実物を見たことがないのですが、トウバナコブアブラムシEumyzus clinopodii Takahashi, 1965ではないかと思います。アブラムシ入門図鑑では79ページに、原色日本アブラムシ図鑑では134ページと353ページにヤマハッカアブラムシEumyzus plectranthi (Shinji)の名で掲載されています。これらの図鑑をお持ちでしたらご参照ください。ゴール形状もアブラムシ外部形態もよく似ています。
なお、「背面の毛は長い」というのは、通常は触角第3節基部の幅の2-3倍以上のことを言います。写真4からは背面の毛は長いかの判断は難しいかと思います。
2019/12/02(Mon) 00:48 No.3847
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
佐野先生:
ご多忙の中、ご教示を賜り本当に有り難うございました。また解像度の良くないアブラムシの写真でご判断をお願いし、大変に申し訳ありませんでした。トウバナコブアブラムシ/ヤマハッカアブラムシを各々の図鑑で調べ、このアブラムシがシソ科の植物に葉を変形させた虫えいを形成することを再確認いたしました。
しかし背面の毛につきましては、20倍の実体顕微鏡で確認したのですが、写真撮影ではアブラムシが動き回るので鮮明に撮ることができませんでした。今回は念のために100%エタノール液で保存していた当該アブラムシを撮影しました(写真a:少し萎んでいます。)
また虫えい形成部位につきまして、ヤマハッカの葉柄には翼のようなものがありますが、当該虫えいの柄にはそれが認められず、また合萼に類似するところも多いため、形成部位は葉ではないのではないかと疑問を持った次第です。ご多忙の中で大変に恐縮ですが、併せてご教示を戴けるよう、宜しくお願い申し上げます。
寄主植物:
撮影年月日:年月日/
2019/12/02(Mon) 00:50 No.3848
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
写真b:アブラムシを側面から撮影
こちらの写真もアブラムシが少し萎んで見えます。しかし背面の毛の有無の状態は維持されていると考えております。
寄主植物:
撮影年月日:年月日/
2019/12/10(Tue) 20:51 No.3855
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:佐野正和
小川様
遠出をしておりましたので、お返事が遅くなりました。
アブラムシの写真を添付していただき、ありがとうございました。背面の毛の有無は確認できました。長さは分かりにくいものの、写真を見た限りでは長いように思えます。背面の毛の長短がよく分からなくても、アブラムシ入門図鑑の79ページのアブラムシ、原色日本アブラムシ図鑑の134ページのアブラムシによく似ていますので、トウバナコブアブラムシEumyzus clinopodii Takahashi, 1965と同定して間違いないかと思います。
虫えい形成部位ですが、本種のアブラムシは葉に虫えいを形成することが知られており、葉以外に虫えいを形成することは考えにくいです。私自身は本種の虫えいを実物では見たことがなく、またヤマハッカにも馴染みが薄いので想像での話となりますが、葉柄の翼は虫えい化によって消失したのかもしれません。合萼のようなのも、虫えい化によって生じたのかもしれません。虫えい化によって別器官のような構造物が生じることは他のアブラムシの虫えいでも知られており、虫えい化によって遺伝子発現に異常が生じたのかもしれなくて、興味深いところです。
はっきりとしたことが言えなくて申し訳ありませんが、少しでもお役に立てましたら幸いです。
2019/12/11(Wed) 22:24 No.3862
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
佐野先生:ご多忙の中で詳細な解説を賜り、本当に有り難うございました。ご教示を賜りました内容からアブラムシ入門図鑑トウバナコブアブラムシ/原色日本アブラムシ図鑑ヤマハッカアブラムシに記載されている虫えい形成の過程、葉の色の変化につきまして更なる興味が湧いてきました。可能であれば来年は、もう少し早い時期からヤマハッカの虫えいを探して、虫えい形成過程や色の変化を観察したいと考えておりますので、今後ともご指導を賜りますようお願い申し上げます。
追伸:虫えい名称について
今回のヤマハッカの虫えいにつきまして、アブラムシ入門図鑑では「葉縁を裏から表に畳んだ虫こぶ。初めは葉と同色であるがその後、暗紅色〜暗紫色、褐色に変色。」と記載され、原色日本アブラムシ図鑑では「葉は裏面より上方に巻いて袋状になり、葉色は赤紫色に変色する。」と記載されていますが、各々の図鑑とも虫えい名称の記載はありません。また原色日本虫えい図鑑には記載がありません。
今回、ヤマハッカの虫えいを見つけて連絡して戴いた方へ虫えい名称も含めて報告したいのですが、虫えい名称のご教示を戴くことは可能でしょうか。大変に恐縮ですが宜しくお願い申し上げます。
2019/12/16(Mon) 00:20 No.3867
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:Tominaga
小川 様
この掲示板でいろいろ教えていただいているTominagaと申します。
すでに結論が出ているところに申し訳ありませんが、参考になればと思い投稿させていただきました。
アブラムシの種類に関してはまったくわかりませんが、ご投稿されたヤマハッカの虫えいとよく似たものを同属のアキチョウジでも観察したことがあります。アキチョウジの虫えいについては、別の方が投稿されたものがこの掲示板の過去ログにありますので、そちらをご確認ください。投稿虫えい一覧のページでアキチョウジを検索していただくと「アキチョウジツボミフクレフシ?」として投稿された年月日がわかりますので、当たりをつけて探してみてください。なお、アキチョウジツボミフクレフシはタマバエによるものとされ、アブラムシによるものは保留になったままです。
ヤマハッカの虫えいの写真(1枚目)を見る限りでは、葉が膨らんだものではなく萼筒が膨らんだものと思います。アキチョウジについても同じで、内部にアブラムシがいることも確認しています。ただ、花冠や雌しべ・雄しべが見当たらないことについてはよくわかりません。「日本原色虫えい図鑑」に記載がないのは、それまでに報告事例がなかったためと思います。
虫えいの名前の付け方には特に学術的な取り決めはありませんが、規則性を持って付けられています。詳しくは「日本原色虫えい図鑑」の9〜10ページ、341ページ以降を参照してください。
2019/12/16(Mon) 20:10 No.3868
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
Tominaga様
ヤマハッカの虫えいについて貴重な情報を戴き、大変に感謝しております。早速、アキチョウジの虫えいの投稿記事を検索し、「アキチョウジツボミフクレフシ?」として投稿された虫えいと類似点が多いことの確認をいたしました。特に虫えいの形状と色が酷似していることは大変に興味深く、また中にいたアブラムシの写真は有翅型の成虫と有翅型の幼虫(翅芽らしきものが見られる)と考えられ、なんとなくアブラムシにも共通性があるように感じております。(注、ヤマハッカでは、虫えい内にいたアブラムシを全て確認したところ、30匹は有翅型の成虫と幼虫、1匹は無翅型成虫でした。)おかげさまで、来年度はヤマハッカだけでなくアキチョウジの虫えいも含めて探索し、虫えい形成部位や形成過程などを比較して観察できればとの考えに至っており、もしも実現時には本同好会掲示板に虫えい図鑑による命名法で虫えい名称を提案したいと考えております。
虫えい名称についての補足:原色日本アブラムシ図鑑およびアブラムシ入門図鑑で虫えい形成の記載があるため、虫えい名称は既に付与されているのではないかとも考えておりました。
ご丁寧なご教示を賜り、本当に有り難うございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。
2019/12/16(Mon) 23:15 No.3869
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:佐野正和
小川様、Tominaga様
アキチョウジの虫えいについての掲示板への投稿を拝見しましたが、おそらくは同種のアブラムシかと思います。無翅成虫は幹母(越冬卵由来の第一世代)に相当し、一次寄主であるヤマハッカやアキチョウジに虫えいを形成し、虫えい内で幹母が産出した第二世代はすべて有翅虫となって虫えいから未知の二次寄主へと移住するのではないかと思われます。この種のアブラムシについての報告は少ないです。虫えい図鑑に記載がないのはそのためかと思われます。
虫えい名称ですが、現在のところ提唱されていません。アブラムシの場合、虫えい名称が提唱されていないことは特に珍しいことではありません(実際に入門図鑑でも原色図鑑でも提唱していません)。特に必要性がなければ、このまま名称なしのままとなるかと思います。
見つけて連絡して戴いた方には、「トウバナコブアブラムシが形成した虫えい」とご報告されてはと思いますが、いかがでしょうか?
2019/12/17(Tue) 13:29 No.3870
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:小川
佐野先生
ご多忙の中、詳細なご教示を賜り本当に感謝しております。全ての虫えいには虫えい名称が提唱されていると考えておりましたが、アブラムシの世界はそうではないということを理解いたしました。また無翅成虫は幹母に相当して移住性アブラムシの可能性があるとの解説はさらに興味深く、虫えいを見つけて連絡を戴いた方への報告は、これまで先生とTominaga様からお教え戴いた内容も含めて「トウバナコブアブラムシが形成した虫えい」として報告したいと考えております。そして来年度も引き続きヤマハッカやアキチョウジの虫えい探索に協力して戴き、観察結果など掲示板でご報告できればと考えておりますので、引き続きご指導をお願い申し上げます。本当に有り難うございました。
2019/12/17(Tue) 23:04 No.3871
Re: ヤマハッカに形成されたアブラムシの虫えい 投稿者:佐野正和
小川様
私自身はこのアブラムシの虫えいの実物を見たことがありませんし、文献もほとんどありませんので、残念ながらコメントできることが限られてしまいます。ぜひご自身で観察してみてください。ご報告を楽しみしております。